エロイムエッサイム、我は求め訴えたり

   epilogue ―― let cast a Elohim-Essaim
 

 青い魔女と赤い魔女の反乱から数年が経った。
 私だけ人間界に取り残され、お姉ちゃん達は消滅を打ち消すために、禁じられた魔法を使ってまで、みんなや世界を丸ごと封印してしまった。
 当時は絶望に打ちひしがれ、涙を流すことに明け暮れたけれど、人間界で人間に混じって暮らすうちにそれも薄まった様に思う。
 もちろん、私は歴史的に人間界には絶対存在しないので、都会では大手を振って歩けないけれど、あの小さな港町くらいなら顔を出せる。
 私が一日だけ居候させてもらった、同い年だった女の子とも仲良くなれた。山火事の時、避難に遅れたからお部屋を借りたんだよと話したら、頬を染めてはにかんでいた。
 一緒に遊んだり、泊まらせてもらったり、二人でお風呂に入ったりと、色々な親睦を深めるイベントがあった。とある夜には、女の子の気持ち良さも教えてくれた。
 そうやって月日が流れる間、私もただぼぅっと呆けていたわけではない。
 あのアースワームが残した魔宝珠を起点に、人里離れた土地で新たな魔法源を構築し、一月後には幻魔を呼べるくらいには育っていた。
 それに伴って、私もお姉ちゃんみたいな魔女を目指して切磋琢磨を忘れず、以前以上の魔力増強に勤しんだ。成果としては、精霊召喚を長時間維持出来る様になった。
 そして二十歳になった今日、お姉ちゃん達との約束を果たす時が来た。私は精一杯集中し、残存魔力さえも全開に、使い慣れた方式で詠唱を開始する。
 おねぇ、あねぇ、遅くなってごめん。待ってて、今度は私が助けてあげるからね。
「我は祈り訴えたり! 天地創造のぴらぺら大魔導書よ」
 目の前に翳した錫杖の先に、四方八方から魔法の光粒が集い、次第に分厚い本の形を成していく。最初であり最後でもある召喚魔法、そう、私達の世界の召喚――
「開け! グラン・グリモワール!!」

                                      了